Ustream LivePack とは?

Ustream Asiaが最近運用テストを行っている通称「LivePack」についてのまとめです。

LivePack」はバックパックに収まる高画質モバイル配信システムで、単体でDV接続されたカメラ映像をH.264 HE-AACなどにエンコードし複数の3G回線を束ねたアップリンクで配信サービス (Ustreamなど) に送る事ができます。

ran_bag.jpg

Ustreamで実際に使用されたのは直接自分で確認 (視聴) した範囲では、

7/24「485系「リゾートエクスプレスゆう」でめぐる ミステリーツアー」
8/1「子ども地球サミット2010 in 南箕輪村」
TBS「革命×テレビ」(番組内中継に使用)

の2イベント1番組とそのリハーサル・テストとまだ事例が少ないのですが、システムとして非常に可能性の高い物ですので少し詳細を調べてみることとしました。

まず、なぜかLivePackの日本語情報が断片的な物しか無く、Ustream Asiaの中川社長のTwitterぐらいしか出て来ません。(後は自分自身のTwitterとか、今書いているこの記事とか) また実はTBSの「革命×テレビ」では全面的に使用されているのですが、Ustreamも含めあくまで番組作りの1ツールに過ぎない位置付けなためあまり大きく取り上げられることもありません。(制作発表時の記事しかない)

そこで海外の情報を調べてみると、そもそも「LivePack」という名称自体が Ustreamの公式名称なのかどうかという点に引っかかりました。実は「LivePack」とはUstreamのコンペティターである「Livestream」でのパッッケージ名称なのです。

Livestream Livepack - Wireless HD Live Streaming
http://www.livestream.com/platform/livepack

しかしこの装置自体は Livestream製な訳ではありません。装置自体を製造販売しているメーカーは別にあり当然製品型番もあるのですが、なぜかあまり表に出て来ません。でも実はメーカー名に関しては散々目にしていたのです。

LiveU - Broadcast Live, Anywhere, Anytime
http://www.liveu.tv/overview.html

あのバックパックにも大きくロゴが入っていましたし、本体の液晶画面にも大きく出て来ます。この「LiveU」社がこの装置を開発・製造・販売している会社でした。「LiveU」はイスラエルのベンチャー企業で北米にも事務所があり、主に放送用品質のモバイル中継システムとしてこの装置を開発しています。「LiveU」のHPがあまり親切な造りでないのですが、良く読んでみると装置の型番も判明しました。「LU-30」が現行の装置の型番となるようです。

つまり、LiveU社のLU-30をLivestream社のサービスにバンドルしたものが「Livestream LivePack」でありUstream社のサービスとバンドル (で売るのか?) した物が「Ustream LivePack (仮称?)」と言われる物となるようです。

ここまで判ればあとはGoogle先生が全部しらべてくれます。

LiveU LU-30 - Google 検索
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=LiveU+LU-30

これでかなり詳細な情報が出て来ますが、2010年のNABでLiveUは現行のLU-30の他 、HDMI入力付きのLU-35 (年内?) HD対応のHD60などを紹介したようです。またセンター側で使うLU-1000というサーバ (ソフト) があり、LU-30からUpLinkされたIPストリームをSDI出力するDownLinkとして機能します。

LiveUはUpLink/DownLinkなどという用語を使っているように、この装置はSNG(衛星を使用したニュース取材)の代わりにラインの引けない地区でのニュース取材を行うのを第一の目的としています。

正確な仕様は未だ不明ですが、大雑把に以下のような違いになるようです。

LU-30 (既発売)
・Firewire input (コンポジットはオプション?)、SD解像度のみ、3Gモデム x6、Wifi x 1、LAN x2、4:3 or 16:9
LU-35 (年内)
・Firewire/HDMI input、HD解像度あり?、3Gモデム x6、Wifi x 1、LAN x2、4:3 or 16:9
HD60 (次期)
・Firewire/SDI/HDMI input HD対応、3G回線 x12、WiMAX (オプション?)
LU-1000 (既発売?)
・SDI output、サーバ (ソフト)

LU-30の簡易取り説がLivestreamにありました。

Livestream Livepack User Guide - Livestream » User Guide
http://www.livestream.com/userguide/index.php/Livestream_Livepack_User_Guide

いろいろ調べた結果をまとめると、

入力について:
SU-30に関してはデフォルトでは2つのIEEE1394ポート (6pin) を持っている模様。2つ同時に使えるのか?とかスイッチング・Mixなどできるのか?その操作は?などは不明です。オプションでコンポジットVideo入力が可能とかHDMI入力の付いたLU-35が年内に出るとか言う記事もありますが裏が取れていません。新型のHDシリーズのHD60ではSDIとHDMIとコンポジットVideoとフル装備になる模様。

解像度について:
LU-30はSD解像度 QCIF(176×144) 〜 D1(720×480)のみのようです。アスペクトは4:3と16:9が使用できるようです。一方HD60はHD解像度 1080i(1920×1080)にまで対応と明記されています。ただ、もし本当にLU-35が存在してHDMI入力できるならLUシリーズでも1080iが使用できるのかもしれません。CPUパワーが違うので封印されているのかもしれませんので入力解像度と配信解像度が同じとは限らないのかも。

モバイル回線について:
LU-30では内蔵の6つの3Gモデムの回線を束ねる (Bonding) ことができると記述されています。3Gモデムがどのような実装をされているのか (PCI Express MiniCardかPCカードかなど) 、SIMはどうなっているのかなどは不明です。

またWiFiも内蔵されている模様ですが仕様は不明です。さらにLAN (たぶんGbE) のポートも2つあり、合計で9系統の接続を使用できます。WiFiやLANもBondingに含められるのかは判りませんが 3G回線を複数使用できるため、キャリアを混ぜれば大抵の場所で接続が得られ、速度も確保出来ます。

この3G回線のBondingがLiveU社の技術の肝と思われますが実は詳細が不明です。単に回線を束ねると言っているだけですが、送信側でけで動作するのか?(通常は無理)  動的なハンズオーバーではどういう挙動をするのか?など要調査です。

ビットレートについて:
回線は64kbps〜2Mbpsの幅があります。エンコードのビットレートも同様です。H.264なら300kbps でかなり安定した画質が得られますから、接続速度が安定しているなら3回線ほどあれば十分足りることになります。

電源について:
専用のバッテリーパック1個で1.5時間使用できるようです。もしくはACアダプタも使用可能。というより単に丸形のDC-inコネクタが1つあるだけです。せめてDC-inが2つあればバッテリーを順次取り替えて長時間運用とかできるのですが、今は90分毎にライブを止めることになります。ただ非常にありふれた丸形コネクタで電圧も多分12V前後でしょうから、放送カメラ用のBPシリーズとかがそのまま使用できるかも。またVマウントバッテリーとか国内でありがちな放送機材用バッテリーが複数接続出来る電源アダプタを作ればもっと運用の幅が広がると思われます。なお、バックパックにはバッテリーパックがあと2つ入る (収納) そうです。

ソフトウェアについて:
エンコードソフトがどのような物なのかは不明ですが、Ustreamや他のFMS系に直で繋がるところをみるとRTMPが使用できるエンコーダのようです。デフォルトでは20のプリセットがあるようですが、細かくカスタマイズは可能とのこと。ビットレート等のパラメータを中継中にダイナミックに切換え出来るのかは不明。なおOSは見て判るようにWindows Embeddedです。ストリーミングのソフトの他はFTPクライアントも実装されているので、ライブにこだわらずオフラインエンコードをしてファイルアップロードするなどの運用も可能です。なお、H.264/HE-AACでエンコード可能なのでパラメータを合わせればiPhoneでも視聴可能なはずです。またTransport StreameにはRTPとMPEG-TSが使用可能です。

サイズ等:
寸法は不明ですが見ての通りの大きさです。重量は5Kg以下とか。

以上がLiveUのSU-30 (所謂 LivePack) について調査した結果です。日本でのテスト運用では3G回線の状態が悪いことが多く、画質的に今一つ実力を発揮できていませんが、3回線しか使っていないとの話もありフルに稼働したらかなりの性能を発揮すると思います。しかしまだまだフィールドで使用する機械としてはこなれていない部分も多く。よりブラッシュアップした次世代機種の登場も楽しみです。

個人的にはこの種の装置の出現は予見していて、自分でもいろいろ (設計) 検討しているのですが、LU-30を1/5程度の大きさにして昔のβCamのドッカブルレコーダーみたいなのを作って欲しいです。H.264に特化するならハードコーデックとかGPGPUで無駄にでかいCPUは無くても済みそうなので、どこか本気を出して欲しいです。LU-30も3G回線Bondingを除けばただのPCですからもうすこし頑張って欲しいです。と言うか3G回線Bondingの部分だけユニットにして売って欲しい。

なお、3G回線Bondingに関しては別途調査中ですので追って報告します。

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