UST Encoder Box 資料
以前大町市美麻地区でのロードレースの際に使用した、完全自動運転Ustreamエンコーダ「UST Encoder Box」 の資料を、かなり前にGoogleドキュメントのプレゼンテーションで作成して放置していたことを思い出しました。ベースはここのBlogに書いたことですが、より詳しく解説してあります。
今回はこの資料とUST Encoder Box について解説します。
(この記事の短縮URL→ http://bit.ly/dLnyWX )
まずGoogleドキュメントのフォルダのリンクを貼っておきます。
Google ドキュメント:UST Encoder Box
URL:https://docs.google.com/leaf?id=0BwAp33eTH10pOWNiM2VhNWEtNDM5ZC00MDcxLTgyMjMtZjk0NTg4NTUwMzUx&hl=ja
短縮:http://bit.ly/gqTVli
この公開フォルダの中には以下のプレゼンテーションが公開されています。
- UST Encoder Box 概要(14頁)
- UST Encoder Box ハード(12頁)
- UST Encoder Box 自動化設定(32頁)
- UST Encoder Box 操作マニュアル(20頁)
この中で実はメインは「自動化設定」編だったりします。ここから必要な部分を抜き出して、加筆することで「概要」編と「操作マニュアル」編が作成されていますので、内容的には重複しています。
「ハード」編は基本的にBlogの内容から持って来ていますが、ハード周りの話だけでなく後半は何故かFMLECmdの解説とかコマンドリファレンスとかになっています。ただ、いちおうこのシリーズの中で唯一ベースハードのことに触れているので「ハード」編と題しています。
ところで「UST Encoder Box」って何よ?という疑問をお持ちの方もおられると思いますので簡単に解説をしますと。
カメラとネットワークを繋ぐだけで自動的にUstream配信を行う箱
のことです。
どこかで聞いたことがあるような気がしますね? そうです。今ならCerevo Liveboxがありますので、わざわざこんな面倒な物を自作しなくてもLiveboxを買ってくれば、簡単に配信をすることが可能です。私も1台持っていますが非常に便利ですし、想像以上に高画質ですので、みなさんも是非買いましょう。
しかし、Liveboxが登場した後でも「UST Encoder Box」には大きな利点があります。それは逆に言えばLiveboxの弱点でもありますが、それぞれ長所短所があるので、用途によってどちらを使うのが良いかは違って来ます。
- UST Encoder BoxはFMLEベースなので高画質
UST Encoder BoxはWindows XPベースでFMLEを使用したエンコーダ構成なため、H.264が使用できます。このため回線が細い際には画質的にかなりアドバンテージがあります。 - UST Encoder BoxはDVカメラ対応
DVカメラ対応というか、実質的にはDVカメラ専用の設計になっています。もちろんWebカメラを使用することも可能ですが、コンセプトは「CATVの収録カメラのi.Link端子にぶら下げて同時配信する」物なのでDV入力とその安定性に拘って機種選定してあります。 - UST Encoder Boxは完全自動運転が可能
Liveboxで一番問題なのは「電源を入れただけでは自動的に配信が始まらない」点です。もちろんUST Encoder Boxも本当に電源を入れただけで視聴可能状態に移行するわけではありませんが(Ustream Broadcasterで操作が必要なため)、現場のエンコーダマシンとしては、完全に自動起動しますし、各種障害に対しても自動復旧します。これは密かに「ゾンビモード」と称していますが、- 配信中の電源落ち
- 配信中のネットワーク断
- 配信中のDVケーブル抜け
- 配信中のカメラ電源落ち
など通常どのエンコードソフトも配信が止まり、更にソフト自体が落ちたりフリーズしてしまうトラブルに対して、自動的に復旧しUstreamサーバへの配信をしつこく再開します。他の配信環境はこの種の外乱に恐ろしく脆弱なので、とても無人運転などできません。実際の現場では、例えばカメラの取り回しの都合でDVケーブルを抜きたいとか、途中にリピーターケーブルを挟んで延長したいとか、カメラバッテリー温存のために一時電源を切りたいとか、停電事故とかありますが、その度に現地でPCを操作するのは全く現実的ではありません。
- UST Encoder Boxは休止モード対応
通常のアプリはコールドスタートした際に自動起動させることは簡単ですが、休止やスリープからの復旧で再度スタートさせることは困難です。これに対してUST Encoder Boxのゾンビモードはいつ何時でも立ち上がろうとする構造なので、条件(カメラソースとネットワーク回線)が整い次第配信を再開します。このため休止モードやスリープ等からの復帰の際も自動的に配信を再開します。 - UST Encoder Boxはリモート配信対応
あまり知られていないことですが、FMLEと配信制御用のBroadcasterは同一PCである必要がありません。同一ネットワークである必要もなく、実はインターネット上のどこにBroadcasterがあっても全く構いません。このため、エンコーダであるFMLEをFMLECmdを使ってヘッドレスにし更にゾンビ化することで手離れを良くする事で、Broadcasterを安全でネットワークの充実した後方に下げてしまうことが出来ます。つまり現場はカメラとBoxだけにできるわけです。また、複数のBoxを集中制御することも可能です。これにより以下のような構成が可能となります。- 現場にUST Encoder Boxとカメラを複数置き、局舎で配信制御
- 現場にUST Encoder Boxとカメラを置き、自宅で配信制御
- 現場にUST Encoder Boxとカメラを置き、ネット上の誰かが代行制御
- Broadcaster配信制御の代行業とか?
- UST Encoder Boxは無償構成
もちろんPC本体やWindows OSは必要ですが、標準的なWindows PCにIEEE1394ポートを増設すれば後は費用をかけずに自動配信の仕組みをセットアップが可能です。
このようにUST Encoder Boxを使用することで、収録現場の負荷を大幅に減らすことができ、カメラや音声の収録に徹してもらうことが可能になります。これはマルチカメラ・マルチチャンネル並列配信という、もっともUstreamらしい(TVには絶対まねの出来ない)構成を組む際に強力な武器となるはずです。
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・・・と言いたいところですが、構成から設定資料、操作マニュアルまで全部公開しちゃってますのでご自由にご利用ください。そのかわりノンサポートですが。
ちなみに、今有る UST Encoder Box 2台が普段暇そうにしているので、専用収納ケースを計画中で今迄のプラケースからアルミトランクにアップグレードしました。こうなるといっそのこと過般型にしてしまおうか迷うところですが、完成したらまた記事にします。
なお「Mac版は無いのか?」という疑問もおありかと思いますが、FMLECmd はMac版にも同梱されていますので、原理的に同様のゾンビエンコーダマシーンをMacで構成することも可能です。その場合はMac miniなどいい筐体だと思いますが「Macをゾンビにするなんてもったいない」という気持ちが強く、また今のMacのアルミ筐体が美しすぎるので、砂が舞うような野外に出して傷だらけにするのは忍びないと思うのです。というかまあMac mini 1台の値段でXPC X100が2台買えてしまったのでWindowsで構成してただけです。Mac版FMLECmdはUnixコマンドで動きますので、ゾンビ化(Macの場合はプロセス化ですが)するにはUnix系に詳しい人に手伝ってもらった方が良いかとも考えています。
なお「Linux版は無いのか?」という疑問もおありかと思いますが、FMLECmd/FMLE はLinux版は存在しないため不可能です。しかし、最近の情報(日経Linux等)によりますと汎用エンコーダのffmpegがRTMPを話すようになったのでH.264/AACなエンコードをRTMPでFMS(Ustreamなどが使用しているFlashMediaServer)にストリーミングすること自体は出来るようです。まだかなり不安定とのことなので現場で使える段階ではありませんが、そのうちEmbed Linuxで構成された「製品」が出て来るのも夢では無くなって来ました。というわけでこちらもUnix系に詳しい人に手伝ってもらった方が良いかとも考えています。これができるといろいろな応用ができるようになりますので、アイデアもいくつかあるので多分そのうち実験することになると思っています。
2011年01月21日 3:59
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